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平成22年5月6日付文書提出命令発令に対する弁護団の見解

平成22年5月6日付文書提出命令発令に対する弁護団の見解

2010(平成22)年5月6日
IHI粉飾決算被害株主弁護団
代  表 弁護士 大 川 原    栄

 本件IHI粉飾決算被害集団訴訟において、被告IHIは、同社が提出した 有価証券報告書等に「虚偽記載」があるとして行われた金融庁の課徴金審判手続 において違反事実および課徴金の金額を認め、課徴金納付命令に従って16億円 もの課徴金を支払ったにもかかわらず、本件訴訟では従前の対応を180度翻し て「虚偽記載」はなかった(違法行為はなかった)旨の答弁を行い、被害原告の 請求について全面的に争っている。
 そのような裁判過程において、原告らは裁判所に対し、被告IHIの違法行 為を立証する資料として、証券取引等監視委員会(SESC)が作成し、所持し ている平成20年6月19日付「検査報告書」の文書提出命令の申立てを行って いた(東京地方裁判所平成21年(モ)第805号文書提出命令申立事件)。

 この申立てに対し、東京地方裁判所民事第31部は、平成22年5月6日付 で証券取引等監視委員会(SESC)に対し、「検査報告書」(一部を除く)を提出せよとの文書提出命令(以下「本件命令」という。)を発令した。
 本件命令は、「検査報告書」につき、その内容の一部を除外してはいるもの の、その提出を命令したものであり、画期的なものである。
 すなわち、裁判所から、例えばカルテル等による損害賠償事件で公正取引委 員会に対して独禁法違反調査資料の文書提出命令が発令されたという事案は多数 存在するが、有価証券報告書等の虚偽記載によって被った損害について、株式の 発行会社に対して投資家が提起した損害賠償請求訴訟において、証券取引等監視 委員会に対する文書提出命令の発令は、事案が集積されておらず、今後、金融商 品取引法の課徴金制度をベースとした証券取引等監視委員会関連事件が増大する と想定されることからしても、今回の命令は行政上の課徴金手続と民事上の裁判 手続とを相互に関連させる上で重要な裁判例であると考えられる。また、行政情 報を民事損害賠償に活用する途を認めるものであり行政秘密を廃し国民の権利保 護を図ろうとする裁判所の積極的な態度は評価すべきものである。

 ただし、本件命令は、原告らが提出を求めた文書の一部分を提出命令の対象 から除外しており、原告らとしては、当該除外部分は被告IHIによる「虚偽記 載」の存在を立証するために必要性が高いと考え、既に即時抗告手続きをとり、 この点に関する上級審の判断を仰ぐこととした。

以 上

平成22年06月02日