お知らせ

最高裁判所の判決により、本件訴訟が終結しました。

 平成30年10月11日、最高裁判所で判決が言い渡され、本件訴訟が終結しました。

 当弁護団では、本件訴訟の終結を受けて以下のとおり弁護団声明を出しました。

弁護団声名(PDF)



IHI粉飾決算被害株主集団訴訟の終結に当たって

平成30年10月11日
IHI粉飾決算被害株主弁護団

 IHI粉飾決算被害株主集団訴訟は、株式会社IHIの粉飾決算に起因する株価下落によって損害を被った投資家が、IHIに対して金融商品取引法21条の2等に基づき損害賠償を請求した事件である。平成19年9月29日の粉飾決算の公表から11年、平成20年9月29日の第1次訴訟提起から10年を経て、本日、最高裁判所の判決によって、ようやく裁判は終結を見た。

 本件裁判は、企業の粉飾決算によって投資家が損害を被った際に、その賠償責任を企業に負わせることを内容とする金融商品取引法21条の2、同18条等が本格的に適用され、争われた裁判である。裁判を通じて、投資家の被害救済に向けたこの制度に一定程度の有用性が認められたが、他方で様々な限界や問題点、あるいは企業側による潜脱手段の存在も明らかとなった。今後、法解釈や、更には改正作業を経て、この制度が投資家の被害救済のためにより実効性の高いものとなることを期待するものである。

 この裁判は、提訴から終結まで実に10年余りを要することとなった。投資資金の回収あるいは被害救済のいずれの観点からも、実効性を疑問視されても仕方のない時間の長さであり、弁護団としても忸怩たる思いがある。
 IHIは、自ら粉飾決算を公表し、臨時株主総会を開催して過去年度の決算の訂正を行い、さらに金融庁が提示した、当時史上最高額であった約16億円もの粉飾決算に対する課徴金を支払った。にもかかわらず、本件裁判では「虚偽記載(粉飾決算)は1円たりともなかった」と主張して粉飾決算を否定し、その主張立証を延々と行った。そのため、被害者側もその反論に多大な時間と労力を費やさざるを得なくなった。本件裁判が長期間を要した最大の原因は、このIHIによる粉飾決算の否定にあった。  IHIが当初粉飾決算を認めていたこと、裁判では1審・2審とも粉飾決算を認定し、最高裁もIHI側の主張を排斥したことから考えて、粉飾決算の事実が存在し、かつIHIもこれを認識していたことは明らかである。IHIは本件粉飾決算に伴い合計約616億円の増資、約300億円の社債発行を行い、合計916億円という莫大な資金調達を行い、粉飾決算公表後の課徴金審判では約16億円もの課徴金を支払いながら、総額でも4億円余りの損害賠償請求(第5次提訴までの合計額)を争うために、事実に反すると認識しながら虚偽の主張を行い、かつて自社の株主であった投資家を切り捨てようとしたものである。その姿勢は、日本の産業及び金融市場における自社の地位と役割の重大性に対する自覚を欠如したものと言わざるを得ない。
 弁護団は、IHIに対して、今回の訴訟に対する姿勢そのものについて真摯な反省と検証を求めるものである。

 同時に、粉飾決算による投資家被害の賠償請求において、粉飾決算の事実そのものの立証が重大なネックになることも、この裁判で明らかとなった。企業が大規模であればそれだけ被害投資家も増えるが、他方で決算も複雑膨大となり、かつ企業秘密の壁に遮られてその解明は困難である。課徴金審判に向けた証券取引等監視委員会による調査結果の開示等、被害者側による粉飾決算の立証手段を整備することが望まれる。

 本件裁判以降も、有価証券報告書虚偽記載による企業の粉飾決算が繰り返し報道され、またこれに対する投資家による損害賠償請求訴訟の提起が散見された。残念ながら、IHIのような巨大企業の粉飾決算とそれに対する公的な制裁が報道されても、企業による粉飾決算が絶えることはないようである。そうであればこそ、投資家の被害救済のため、また健全な投資市場の維持確保のためにも、この投資家被害救済制度がより実効性のあるものとなるための更なる制度整備を求めるものである。

以 上

平成30年10月11日